母校のニュース(2000年)

大阪大学「21世紀ドリーム・プラン」

  1. まえがき
     21世紀を目前にして、大阪大学はいま大きな2つの問題を抱え、重要な変革期にある。一つは、独立行政法人化の問題であり、これは阪大だけではなく、国立大学全体の問題である。2003年から施行されることになっており、そのための決断を2000年の夏頃までにしなければならなず、現在、活発な議論がなされている。 他の一つは、大阪大学は2001年に大阪帝国大学創立70周年を迎えようとしていることである。この70周年からの100年間に向けてのドリームを描こうと岸本総長が発案し、全学の将来構想委員会において、その基本構想が「21世紀ドリーム・プラン」として報告書(A4版50頁)にまとめられ、昨年10月に全学の教官に配布された。その中のいくつかは、70周年記念事業として実現しようとしている。 本原稿の趣旨は、後者の話題を澪電会会員に紹介することにある。
     
  2. 「21世紀ドリーム・プラン」
     この報告書は、大阪大学がいま何を考えるべきか、また基本姿勢を表す標語である「地域に生き世界に伸びる」をどう実践するのかを明らかにするために、作成された。 全体は9章からなっており、第2章「ユニバーシティとしての阪大」では、阪大の目指す道が述べられている。阪大はユニバーシティ(総合大学)としてのアイデンティティを確立することが大切であること、その中で、弾力的な教育プランを確立すること、学問のインターファカルティー構想、ユニバーシティとしてのキャンパスプランなどが述べられている。特に、豊中キャンパスと吹田キャンパスにやっと集結を果たしたが、一方では大阪の町から離れ、社会の新たなニーズに鈍感になっていること、などが指摘されている。これからは、もっと大阪の町の中に広がって、町と共生するキャンパス展開を構想する必要があること、また文化を求め、市民との交流を求めて、大阪の町に帰ることの必要性を訴えている。 第3章「地域に生きる」では、キャンパス近隣住民との共生、図書館はじめ体育館などの施設の開放、あるいは大学の知的財産の地域社会への貢献、または地域からの大学への参画などの重要性が述べられている。 第4章「世界に伸びる」では、グローバルスタンダードの通用する大学、国際的学術研究推進に貢献できる大学、外国人研究者や留学生のためのキャンパス整備、などの取り組みについて述べられている。 第5章「同窓会のサービス強化」では、大学全体としての同窓会組織を持っていないのは、大学の発展を考えるとき致命的であること、各学部・大学院同窓会のネットワーク化を推進し、ハブ機能を発揮することのできる『大阪大学同窓会』の設立を提案している。これは後でもう少し詳しく触れたい。 第6章「中之島センター:知的情報の発信と交流の場」 大阪大学は、本学草創の地中之島にもう一つの拠点を求めることは、大学と町との共生を進める上で極めて重要なことであると指摘し、「大阪大学中之島センター」の設立を提案している。これは記念事業の一つに取り上げれ、検討されている。この内容については、4.項でもう少し詳しく述べたい。 第7章「吹田キャンパスの21世紀:知的交流の実験空間」では、住環境・宿泊施設の充実、第8章「豊中キャンパスの21世紀:文化と電灯のプラザ」では、大学ミュージアムの設置の提案がかかれている。 そして第9章は「むすび」になっている。
     
  3. 創立70周年記念事業
     記念イベントが2001年5月5日(土、祝日)、6日(日)の2日間、「地域に生き世界に伸びるー阪大発21世紀」を統一テーマとして、中之島の阪大跡地のすぐ近くに新しくオープンした大阪国際会議場で開催される予定である。 2日間のイベントとしては、式典、祝賀会、コンサート、国際シンポジウム、ディジタル・イメージ・シアター、など盛りだくさんの企画がなされている。 事業としては、記念アルバム刊行や「大阪大学新世紀セミナー」(全30巻)記念出版、および「中之島センター」記念施設建設などが計画されている。 また、70周年記念のロゴが決まっており、イメージキャラクターは学内応募作品の中から選考され、豊中キャンパスから発掘されたマチカネワニをイメージしたものに決まっている。
     
  4. 「中之島センター」(仮称)の設立構想
     阪大の標語である、地域の発展に寄与し、さらに世界の文化に貢献するには、知的情報と交流のフロンティアとしてソフトウェアとハードウェアの両方を兼ね備えることが必要であり、そのセンターの設立が創立70周年記念事業の一つとして、推進されている。
     報告書第6章から抜粋すると、センターが持つべき基本的機能は、教育・研究機能、情報発振機能、そして社会との交流機能としている。
     その教育・研究機能として、
     1)社会人大学院授業(昼夜開講制大学院)
     2)高度職業人講座(科学・技術講習会、高度技術研修、レフレッシュ教育)
     社会への情報発振機能として
     3)中之島情報センター(教育・研究情報データベース、大学情報の展示)
     4)コンサルタント業務(技術、法律、経営、医療)
     5)技術移転機関(TLO)業務
     社会との交流機能としては
     6)ヘルスケア・クラブ(同窓会員、後援会員等へのヘルスケア支援を行う組織)
     7)中之島センター講演会(文化講演会、学術講演会、シンポジウム)
     8)一般社会人講座(教養・文化講座、科学講座)
     このセンターの建設費は、と文部省からの経費と50周年記念でいただいた募金をベースにすることになっている。大阪市内にこのようなセンターが建設されれば、多くの同窓生にとって利用価値の高いものとなるであろう。
     
  5. 「大阪大学同窓会連合会」設立
     現在、大阪大学の各部局にはそれぞれ同窓会が存在し、独自に活動しているが、部局間の垣根を越えた横断的・全学的な連携がないのが現状であり、残念な状況である。創立70周年を機会に、全学同窓生・教職員が相集い、部局間同窓会などのネットワーク化を役割とする全学組織「大阪大学同窓会連合会」を設立し、大阪大学の発展に寄与することを考えている。各部局の同窓会との細かな詰めをする必要があるが、現在、設立の方向で進んでいる。
     澪電会、工業会、そして連合会とややこしくなるが、巧く機能していくように知恵を出し合うことが必要である。
     
  6. むすび
     以上、大阪大学内で議論されている21世紀をにらんでのドリーム・プランに関連する事柄について、私の知っている範囲で説明をした。大学と同窓生との関わりは、ますます密になっていかなければならない時代にきているようである。いずれ卒業生の皆様に募金のお願いもしなければならない。澪電会会員におかれましては、澪電会のことだけでなく、大阪大学全体の発展のためにも、一層のご協力をお願いしたい。
(西原 浩 電子工学専攻・教授、附属図書館長/評議員)
会報澪電No.21より

池田博昌教授最終講義

 通信工学専攻教授・池田博昌先生は、平成12年3月31日をもって定年退官されることとなりました。ご退官を迎えられるにあたり、最終講義が平成12年 2月2日(水)午後1時より電気系メモリアルホールにて行われました。当日は、学内のみならず、卒業生等、学外からも多数聴講に来られました。通信工学専攻長の塩澤俊之教授より池田先生の御略歴が紹介された後、「交換技術の進歩とともに40年」と題する90分の講義が始まりました。まず、熊谷三郎先生のご指導のもと通信工学科においてミリ波FMレーダに関する研究を卒業研究として行われた後に、日本電信電話公社(現NTT)に入社され、交換機のディジタル化(時分割交換機)に基礎研究から実用化に至る過程のすべてに携わられたことを述べられました。この過程において、基礎研究の段階では、交換機通話路の電子化へのアプローチとしてPAM(パルス振幅変調)交換通話路、ディジタル化へのステップとしてのPCM交換機(DEX-T1号交換機)の制御系システム、PCM-TDMA衛星通信方式の実験として世界初の実衛星を使った実験システムなどについての研究を進められました。また、実用化への取り組みとして、電子交換機通話路系システムの高機能化に向けた、多接点封止型スイッチを用いた交換システムの開発、およびネットワークディジタル化に向けた戦略的移行形態に基づくシステム開発を進めて来られました。開発されたシステムとして、NTTのネットワークに順次導入されたD60形中継交換機、D70形加入者線交換機、D70形ISDNシステムがあげられました。そして端末までのディジタル化を実現するISDNのサービス開始時点の1988年において、ようやく開発競争においてアメリカを抜き国際的にトップレベルに到達したことを感慨深くお話になられました。また、その後、あらゆる情報が単一のネットワーク上で完全にディジタル情報として通信されるATM技術の開発の方向付けに努力されたことも述べられました。NTTにおいて日本の交換機のディジタル化に向けた研究開発に一貫して携わられた後、1994年に大阪大学に来られてからは、マルチメディアへの展開を軸にATMからインターネットにわたる広範な研究テーマに取り組まれ、多くの業績を残されたことを回顧されました。また、今後のネットワーク研究の進むべき方向についても示唆されました。さらに、大阪大学において工学教育の改善に力を注がれたことや、学協会での活動内容など、広い範囲にわたり先生の大阪大学での6年間を振り返られました。最後に、先生のご趣味であるゴルフやヨットの話に触れられ、大阪大学において楽しく研究生活を過ごされたことについて改めて感謝の言葉を述べられました。以上の内容の最終講義を終えられると聴講者全員から大きな拍手が送られました。

 講義終了後、先生のご指導に感謝の意を込めた花束贈呈が研究室の橋谷知詠子秘書から行われ、再度の大きな拍手に包まれました。交換機の進歩とともに世界との競争の中でネットワークの高機能化に取り組まれた先生の研究歴が凝縮され、実用化を最終目標とする工学研究の真髄を身をもって実践して来られたことが実感できる最終講義でありました。なお、最終講義の後、別室で池田先生を囲んだパーティが開かれ、約2時間にわたって和やかな雰囲気での懇談が行われました。

(山本 幹(通信・昭58)記)
会報澪電No.21より

熊谷信昭元大阪大学総長文化功労者顕彰祝賀会

 元大阪大学総長熊谷信昭先生(大阪大学名誉教授、科学技術会議議員)には、このたび、新しい電磁波論の開拓と電磁波工学の確立に関する顕著な功績、およあび多くの有為な人材の育成とわが国の科学技術の発展に対する多大な貢献により、平成11年度の文化功労者顕彰をお受けになりました。先生の栄えある文化功労者顕彰をお祝いするため、先生縁りの600名を超える方々のご列席のもとに、平成12年2月12日、リーガロイヤルホテル「光琳の間」において「熊谷信昭元大阪大学総長文化功労者顕彰祝賀会」が開催されました。

 祝賀会は、通信工学専攻長塩澤俊之教授の司会で進められ、まず祝賀会の発起人を代表して大阪大学名誉教授で現在大阪大学工業会副会長を務めておられる鈴木 胖先生から開会の挨拶が行われ、熊谷先生のご略歴ならびにご業績の紹介がありました。引き続き、多数のご来賓を代表して、岸本忠三大阪大学総長、村井眞二大阪大学大学院工学研究科長ならびに文部事務次官佐藤禎一様のお三方から丁重なご祝辞を頂きました。お三方のご祝辞の後,挨拶に立たれた熊谷先生は、「今日まで、私は仕事の上で不愉快な思い、辛い思いをしたことがただの一度もない、本当に幸せな人間です」、「世に師の恩というのがありますが、同じように弟子の恩というのもあるのではないかという気がしています。これからは,多くの弟子たちに報いる人生を送りたいと思っています」としみじみと述懐されました。

 祝電披露,花束の贈呈に続いて、NHKニュースナインのキャスターとしてお馴染みの道傳愛子さんの司会で、祝賀会のハイライトである鏡割りが行われました。鏡割りには、壇上に並べられた五つの薦樽を囲んで、政財界、学界、官界など、各界から招待されたご来賓35名の方々が参加されました。特に、鏡割りに先立ち、就任早々の太田房江大阪府知事からスピーチを頂き、参会者の注目を集めました。

 鏡割りに引き続いて、前大阪大学総長金森順次郎先生のご発声で乾杯が行われ後、暫しの間、熊谷先生ご夫妻を囲んでなごやかな歓談が続きました。祝賀会も終りに近づき、名残惜しい雰囲気の中で、先生ご夫妻は参会者の盛大な拍手に送られて退場され、その後、澪電会会長藤井克彦先生による閉会の辞をもって祝賀会は盛会のうちに散会しました。

(塩澤俊之(通信・昭39)記)
会報澪電No.21より

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Last-modified: 2010-03-12 (金) 18:42:48 (5934d)