母校のニュース(2005年)

専攻再編について

 24専攻あった工学研究科の専攻は、平成17年度から統合されて10専攻となる。電気系では、電気工学専攻、通信工学専攻、電子工学専攻、電子情報エネルギー工学専攻の4専攻が統合されて、電気電子情報工学専攻となる。他方、原子力工学専攻は環境工学専攻と統合して環境エネルギー工学専攻となる。また、旧情報システム工学専攻は、ご存知のように、既に、基礎工学研究科や理学研究科と一緒に作った情報科学研究科の情報ネットワーク学専攻、情報システム工学専攻、マルチメディア工学専攻、バイオ情報工学専攻に分かれている。今回は、平成17年度から新たにできる電気電子情報工学専攻について紹介する。

 表1は、平成16年度と平成17年度以降の履修コース対照表である。平成17年度にできる電気電子情報工学専攻には、電気電子システム工学部門、情報通信工学部門、量子電子デバイス工学部門の3部門ができる。また、大学院博士前期課程と後期課程の履修コースは、平成16年度の6コースが平成17年度には4コースに統合される。なお、これらの4コースを基礎とした総合コースが新たにできるので、実質的には5コースとなる。大学院の入試は、従来のペーパーテストだけの一般入試に加えて、新たに推薦入試を開始する。また、入学試験科目「英語」へのTOEIC、TOEFL導入が決定され、英語はTOEIC又はTOEFL を受験して、公式認定証を提出することになった。

表1.電気電子情報工学専攻の履修コース
平成16年度まで
専攻名履修コース名
電子情報エネルギー工学電磁エネルギー工学
電子情報工学
電気工学システム・電力工学
量子電子工学
通信工学通信工学
電子工学量子電子工学
システム工学
 
平成17年度以降
部門名履修コース名
電気電子情報工学専攻電気電子システム工学システム・制御・電力工学
先進電磁エネルギー工学
情報通信工学情報通信工学
量子電子デバイス工学量子電子デバイス工学

 表2は、電気電子情報工学専攻の部門、講座、領域と在籍する教授名を示す。これを見ていただくと判るように、電気電子システム工学部門は、従来の電気工学専攻と電子情報エネルギー工学専攻のシステム関連の4研究室とが構成するシステム・制御工学講座と従来の電子情報エネルギー工学専攻の電磁エネルギー工学コースが構成する先進電磁エネルギー工学講座を持つ。情報通信工学部門は、従来の通信工学専攻と電子情報エネルギー工学専攻の情報通信関連の7研究室から構成される。量子電子デバイス工学部門は、従来の電気工学専攻と電子工学専攻と電子情報エネルギー工学専攻の材料・デバイス・集積関連の10研究室から構成される。また、それに伴い、電気系協力講座の11研究室が3つの部門に表2のように再配置される。

表2 電気電子情報工学専攻の部門・講座・領域
部門講座領域名教授名
電気
電子
システム
工学
部門
システム・
制御工学
パワーエレクトロニクス伊瀬 敏史
インテリジェントコントロール熊谷 貞俊
パワーシステム辻 毅一郎
システムアナリシス谷野 哲三
先進電磁
エネルギー
工学
高強度レーザー工学田中 和夫
プラズマ生成制御工学西川 雅弘
高エネルギー粒子工学児玉 了祐
先進ビームシステム工学飯田 敏行
協力講座
レーザー
エネルギー学
レーザーエネルギー学研究センター 光・量子材料研究領域中塚 正大
レーザーエネルギー学研究センター 放射流体プラズマ研究領域西原 功修
レーザーエネルギー学研究センター 高密度プラズマ物理研究領域三間 圀興
情報
通信
工学
部門
通信
ネットワーク
工学
ロバストネットワーク工学滝根 哲哉
フォトニックネットワーク工学北山 研一
ワイヤレスネットワーク工学小牧 省三
通信システム工学メディア統合コミュニケーション工学馬場口 登
ワイヤレスシステム工学三瓶 政一
極限
光通信工学
メディア統合コミュニケーション工学井上 恭
環境電磁工学河崎 善一郎
協力講座
知能
システム
工学
産研 知能システム科学研究部門 高次推論方式研究分野元田 浩
産研 知能システム科学研究部門 知識システム研究分野溝口 理一郎
量子
電子
デバイス
工学
部門
創製
エレクトロニクス
材料
機能創製基礎プロセス伊藤 利道
機能性材料創製佐々木 孝友
ナノ材料・計測片山 光浩
エレクトロニクス
デバイス
量子電子機能材料デバイス杉野 隆
分子機能材料デバイス尾崎 雅則
集積光電子デバイス栖原 敏明
先進電子デバイス基礎近藤 正彦
集積
エレクトロニクス
集積機能デバイス谷口 研二
原子分子操作組立森田 清三
生体システム・デバイス八木 哲也
協力講座
光・電子材料科学
産研 量子機能科学研究部門 光・電子材料研究分野朝日 一
先端科学イノベーションセンター大森 裕
電顕センター・生体立体超構造分野鷹岡 昭夫
レーザーエネルギー学研究センター テラヘルツフォトニクス研究領域斗内 政吉
協力講座
極限科学・量子科学
レーザーエネルギー学研究センター 超高強度光学研究領域宮永 憲明
レーザーエネルギー学研究センター 光・量子放射計測研究領域西村 博明
森田清三代議員
会報澪電No.26より

藤岡弘教授最終講義

 情報科学研究科情報システム工学専攻藤岡弘先生は、平成 17年3月31日をもって定年退職されることとなりました。ご退職を迎えられるにあたり、最終講義が平成17年2月10日(木)午後3時より電気系メモリアルホールにて行われました。当日は、学内の学生や先生方のみならず、卒業生等学外からも多数聴講に来られました。情報システム工学専攻長の尾上孝雄教授より藤岡先生のご略歴が紹介された後、「既成概念を超えたところに飛躍あり-研究生活40年を振り返って-」と題する講義が始まりました。

 先生はまず、大学進学前の出来事として、昭和32年のソビエト連邦が打ち上げに成功したスプートニク1号のアンテナと昭和34年のキルビー特許、ノイス特許による集積回路の発明をご紹介され、人工衛星と集積回路に、特に宇宙空間におけるアンテナ設計に興味を持たれ、通信工学科に進学されたことを述べられました。続いて、研究室配属後の夏休みに実施された工場実習で、人工衛星搭載用アンテナの指向性を解析し、コンピュータでパターンを計算した経験が後の研究で大いに役立ったことを述懐されました。

次いで先生は、第1の既成概念を超えたところに飛躍ありとして、当時未開拓領域であった、従来の静止系の電磁界理論では処理できない工学的諸問題、特に高速飛翔体を含む系の通信に関する研究に取り組まれたことを挙げられました。

 次いで、電子ビーム研究施設に就職されてからのストロボ走査電子顕微鏡の開発と電子デバイスへの応用、電子ビームテスティング技術の集積回路診断への応用を紹介されました。この中で、第2の飛躍として、集積回路の基本構造である金属酸化膜半導体(MOS)構造における低エネルギー入射電子の異常侵入現象の発見を述べられました。これを契機に産業界において電子ビーム計測装置の低加速電圧化が進みました。引き続き、第3の飛躍として、ストロボ電子ビーム計測装置において、従来信じられていたビームパルス幅ではなく走行時間効果が時間分解能を制限することを明らかにしたこと、第4の飛躍として電子ビーム計測装置のコンピュータ制御を他に先駆けて手掛けたことを述べられました。これらの成果は実用面でも利用され、電子ビームテスタと呼ばれる商用装置の開発に大きく貢献されています。

 次いで、情報システム工学専攻に移られてから行われた、電子ビームテスティング技術の大規模集積回路診断へのシステム化、集積システム診断のための画像処理技術、大規模集積回路の設計・生産・テストの一連の工程を一つのシステムとしてとらえたシステム評価・診断・最適化に関する先駆的研究を紹介されました。この中で、第5の飛躍として、大規模集積回路のレイアウトデータのみを用いた自動故障追跡法を、第6の飛躍として、経験と勘に頼りがちであった大規模集積回路生産テスト工程へのシミュレーション解析技法の導入を取り上げられました。

 最後に、先生は、既成概念(常識)にとらわれることのない研究姿勢の重要性について力説され、講義を終えられました。また、このような教育および研究の姿勢を持ち続けることを可能にした大阪大学での研究生活に感謝の言葉を述べられました。

 次いで、先生の永年のご指導に感謝の意を込めた花束贈呈が研究室の大矢佳恵秘書から行われ、大きな拍手に包まれ、先生はご退席されました。

 なお、最終講義の後、別室で藤岡先生を囲んだ茶話会が開かれ、約1時間にわたって懇談が行われました。

中前幸治(電子・昭52)記
会報澪電No.26より

井澤靖和教授最終講義

 寒さも厳しい2月16日、井澤靖和教授の最終講義がレーザーエネルギー学研究センター大ホールで開催された。井澤教授は昭和48年3月工学部附属レーザー工学研究施設助手に着任以来、レーザー同位体分離を中心に、「高出力レーザーとその応用」に関する研究を進められ、関連分野の萌芽期にその礎を築かれた。

 辻副センター長による略歴紹介の後、「レーザー同位体分離研究の30年」と題して講義が行われた。レーザーウラン濃縮実験では2段階分離で、35%までの濃縮を確認されたこと、濃縮プラントにおける光電離基礎課程の研究、金属蒸気中のレーザーの長距離伝搬の研究、レーザープラズマ中での原子核励起の研究などが部外者にも分かりやすく紹介された。

 会場の大ホールは150人を収容するも、超満員となり、2箇所の出入り口まで黒山の人だかりができる状態であった。兜秀昭氏(電学昭41)島木亮治氏(電修昭44)吉田國雄氏(電修昭48)藤原閲夫氏(電博昭56)小林弘幸氏(電学昭51)など、学外からの澪電会員の懐かしい顔を拝見することができた。

 最後に佐藤春夫の「慎みて努め行なえや、その希望成らぬことはなし」と言う詩を引用され、謙虚な態度で研究に望むよう、後輩にレーザー応用研究に関する熱い思いを託された。

会報澪電No.26より

吉野勝美教授最終講義

 電子工学専攻教授・吉野勝美先生は、平成17年3月31日をもって定年退職されることになりました。ご退職を迎えられるにあたり、最終講義が平成17年2月9日(水)午後3時より銀杏会館阪急電鉄・三和銀行ホールにて行われました。当日は、学内のみならず、卒業生をはじめ学外からも多数聴講に来られました。電子工学専攻長の栖原敏明教授の司会により、「研究者としての半生を振り返って-自然に学び、調和する、夢のある楽しい科学技術-」と題する1時間半の講義が始まりました。

 最初に、研究を農業にたとえられ、様々なタイプの研究者がいるなかで、ご自身は「耕す人」あるいは「種をまく人」であると述べられ、これまでの研究者としての半生を振り返る講義がスタートしました。まず序論として、先生が生まれた当時の時代背景や幼少年時代をすごされた島根の様子、さらに高校時代、東野田時代の様子を、懐かしい当時の新聞記事や写真を使って紹介されたのち、本題の有機エレクトロニクスについてのこれまでのご研究の紹介に入られました。なかでも、その黎明期より精力的に研究を推進されてきた導電性高分子のお話では、白川英樹博士をはじめとする多くの国内外の研究者との交流を織り交ぜながら、基礎研究から先駆的応用研究についてわかりやすく解説され、導電性高分子研究の「種まき」をされたことを紹介されました。また、フォトニック結晶に関するお話では、特に、自然界にも数多くのナノ構造(フォトニック結晶)があることを紹介されるとともに、ご自身が世界に先駆けて進められてきたオパール構造のフォトニック結晶の研究を例に、講義のタイトルでもある「自然に学び、調和する、夢のある」研究を語られました。さらに、当時の科学技術振興事業団のプレベンチャー事業による液晶測長器研究の紹介と、その成果として設立された二つのベンチャー会社についてお話されました。

 最後に、これまでの経験から得られた研究者としての教訓について、それぞれわかりやすいたとえを使って説明され、大いに参考になる示唆に富むお話を聞かせていただきました。

 結びとして、再び研究者のタイプについて触れられ、ご自身はこれから「楽しむ人」になると述べられ、益々研究者としてご活躍されることを示唆されるとともに、これまでの研究生活にかかわってこられた方々への感謝の言葉を述べられ、450枚に達するスライドを駆使した講義を終わりとされました。講義終了後、先生の長年のご指導への感謝の意を込めて、研究室の金子千恵子秘書より花束が贈呈され、受講者全員の大きな拍手のもと本日の最終講義を終了しました。なお、講義の後、同じく銀杏会館の別室にて吉野先生を囲んだ懇親会が開かれ、旧知のご友人や卒業生の方々をはじめとして、皆様と和やかな雰囲気で懇談が行われました。

(尾崎雅則(電気・昭58)記)
会報澪電No.26より

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Last-modified: 2010-03-12 (金) 19:49:34 (5153d)