母校のニュース(2006年)

専攻再編について

 既にご存知のように、平成17年度に大学院の再編を行った。24専攻あった工学研究科の専攻は、平成17年度から統合されて10専攻となり、電気系では、電気工学専攻、通信工学専攻、電子工学専攻、電子情報エネルギー工学専攻の4専攻を統合して、電気電子情報工学専攻となった。他方、原子力工学専攻は環境工学専攻と統合して環境エネルギー工学専攻を設置した。

 平成18年度は、平成17年度に実施した大学院の再編に引き続いて、学部の学科の再編を行う。4学科体制だった学部は、平成18年度から大学院の再編に合わせて5学科体制となり、電気系では、電子情報エネルギー工学科のエネルギー量子工学科目と地球総合工学科の環境工学科目とを統合して、環境エネルギー工学科を新たに設置する。その結果、電気系からエネルギー量子工学科目が抜けるため、電子情報エネルギー工学科は電子情報工学科に改称する。今回は、平成18年度から電子情報工学科に変わる学部の組織と教育について紹介する。

 表1は、平成17年度以前と平成18年度以降の学部の履修コース対照表である。平成18年度にできる電子情報工学科には、電気電子工学科目と情報通信工学科目の2学科目体制となる。また、学部の履修コースは、平成17年度までの5コースが平成18年度には4コースに変わる。なお、今回の学部の再編により、従来は大学院のみを担当していた電子情報エネルギー工学専攻に所属していた先生方も学部の授業を担当することになり、大学院の電気電子情報工学専攻に先進電磁エネルギー工学コースを設置したのに合わせて、学部の学科にも先進電磁エネルギー工学コースを新たに設置する。学部の入試定員はエネルギー量子工学科目が抜けるため、197人から162人に減少する。前期日程の定員は129名で後期日程の定員は33名である。

 学部のカリキュラムも大幅な改革を行う予定である。具体的にはコア科目制度(必修)を導入する。学科のコア科目、学科目のコア科目、コースのコア科目の導入を平成18年度と平成19年度の2段階で行う予定である。また、全て必修だった専門基礎教育科目に選択科目を導入するとともに、新たに、電磁気や回路の基礎を教える電気物理学A(必修)と波動・熱力学・量子力学の基礎などを教える電気物理学B(必修)を専門基礎教育科目に導入する。新設する電気物理学AとBは電気系の基礎を教えるので、電気系教官が豊中キャンパスに直接出向いて講義を行う予定である。以上に伴い専門科目の大幅な見直しも行っている。

表1.電子情報工学科の履修コース
平成17年度まで
学科目名履修コース
電子情報
エネルギー
工学科
(定員197名)
電気工学電気工学
通信工学通信工学
電子工学電子工学
情報システム工学情報システム工学
エネルギー量子工学エネルギー量子工学
 
平成18年度以降
学科目名履修コース
電子情報
工学科
(定員162名)
電気電子工学システム・制御・電力
先進電磁エネルギー
量子電子デバイス
情報通信工学情報通信工学
森田清三学科長
会報澪電No.27より

赤澤堅造教授 最終講義

 情報科学研究科バイオ情報工学専攻赤澤堅造先生は、平成18年3月31日をもって定年退職されることとなりました。ご退職を迎えられるにあたり、最終講義が平成18年2月10日(金)午後3時より電気系メモリアルホールにて行われました。当日は、学内の学生や先生方のみならず、卒業生等学外からも多数聴講に来られました。バイオ情報工学専攻長の柏原敏伸教授より赤澤先生のご略歴が紹介された後、「筋・生体情報工学」と題する1時間半の講義が始まりました。

 先生はまず、「生体情報工学」の講義の一部を紹介されました。生体情報工学の講義は、生体医工学(生体工学、医用工学)と人間・福祉工学の情報科学技術に関する学問分野であり、このため生物に殆どなじみのない工学部の学生に興味をもってもらえるよう、身近な例をあげて説明するよう試みていることを語られ、例えば、手振れ防止カメラを例に取り、人の感覚器と工学センサの比較をしながら、人が受容器でどのように感覚情報を処理しているかなどについて教えていることを紹介されました。

 次いで先生は、初期の頃の研究成果の一端をまず紹介されました。生物の優れた機能に学ぶことを研究テーマに選択し、筋はコンパクトで重量当たりの出力が大きいことに着目し、筋についての研究を行うことを決められたと研究テーマ決定の過程を述懐されました。そして、歩行ネコの下肢筋の力学特性を計測し、神経・筋系の力学的な柔らかさについて、筋の神経支配(運動サーボ)の仕組みの観点から考察し、その結果、筋は立脚相ではかたく姿勢維持に有効で、遊脚相ではやわらかく“柳に風”の特性を持つことなどを明らかにされました。このパイオニア的な研究を通じて、研究を行うには“綿密なる研究計画と詳細な解析・検討が必要”で、学んだことは“叩かなければ何も得られない、外国では叩けば何かが得られる”、と強調されました。この研究成果を基に、生体の運動制御の仕組み(制御システム)を取り入れた人工の手、即ちやわらかさを実現した筋電義手を開発され、切断前の元の手と同じような感覚で義手の制御が可能となり、筋電義手使用の訓練期間が短縮され、壊れやすい物体の把握が容易になることをNHKの教育テレビで放送されたビデオなどを利用して示されました。

 次に、ヒューマンインターフェースに関する研究の例として、情報科学技術を福祉工学へ展開できないだろうかというコンセプトのもと、開発中の、神経疾患(リズム不整)の人や中高年の人が容易に音楽演奏の出来る新しい電子楽器 Cymis (Cyber Musical Instrument with Score) の成果の一端を紹介されました。

 最後に、夏目漱石の「秋はふみ吾に天下の志」と言う句を引用され、学生諸君そして後輩諸兄がさらなる先進国を目指して研究に望むよう、熱い思いを託され講義を終えられました。

 最終講義の後、先生の永年のご指導に感謝の意を込めた花束贈呈が研究室の工藤雅子秘書から行われ、大きな拍手に包まれながら、先生はご退席されました。なお、講義の後、引き続いてGSEコモン・イースト棟15階 ラ・シェーナにて赤澤先生を囲んだ茶話会が開かれ、旧知のご友人や卒業生の方々をはじめとして、皆様と和やかな雰囲気で懇談が行われました。

朴 炳植(電気・昭43)記
会報澪電No.27より

吉野勝美先生退職記念祝賀会

 旧電子工学専攻の吉野勝美先生は、平成17年3月31日をもって停年退職されました。先生のご功績を称えるとともに、多年にわたるご指導に対する感謝の気持ちを込めて、先生縁りの310名を超える方々のご列席のもとに、平成17年7月16日(土)、リーガロイヤルホテル「光琳の間」において「吉野勝美先生退職記念祝賀会」が開催されました。

 祝賀会は、電気電子情報工学専攻量子電子デバイス部門長の栖原敏明教授の司会で進められました。まず、祝賀会実行委員長である電気電子情報工学専攻長森田清三教授から、吉野先生のご略歴ならびにご功績の紹介がありました。引き続き、大阪大学総長 宮原秀夫先生、大阪大学大学院工学研究科長 豊田政男先生、東北大学大学院工学研究科副研究科長 内田龍男先生、シャープ株式会社常任顧問・前副社長 三坂重雄様、長崎総合科学大学常務理事・前学長 山邊時雄先生から、丁重なご祝辞を賜りました。さらに、今回の祝賀会のためにアメリカとドイツから駆けつけて頂いたテキサス大学教授 Anvar A. Zakhidov先生、ダルムシタット工科大学教授 Wolfgang Haase先生、ユタ大学教授 Z. Valy Vardeny先生からユーモアを交えたご祝辞を頂きました。その後、シャープ株式会社・元副社長、株式会社国際基盤材料研究所・会長 佐々木正 様のご発生で乾杯が行われ、祝宴に入りました。

 本祝賀会は着席ビュッフェ形式をとり、テーブルごとに歓談の輪が広がるなか、吉野先生ご夫妻も各テーブルをまわられ、ご夫妻を囲んでなごやかな歓談が続きました。一段落したのち、吉野先生の研究室で元秘書をされていた大阪センチュリー交響楽団ヴァイオリン奏者 広津智香様によって、ファリャ作曲「スペイン舞曲」、フォーレ作曲「夢の後に」、グノー作曲「アヴェ・マリア」の演奏があり、皆素晴らしいヴァイオリンの音に酔いしれました。

 祝賀会の終わりに、記念品贈呈、花束贈呈が行われた後、吉野先生よりご挨拶があり、これまでいろいろと支えていただいた方々への感謝の言葉を述べられました。その後、名残惜しい雰囲気の中で、先生ご夫妻は出席者の盛大な拍手に送られて退場され、谷口研二教授による閉会の辞をもって祝賀会は盛会のうちに散会致しました。

尾﨑雅則(電気 昭58、M60、D63)記
会報澪電No.27より

いちょう祭オープン研究室

 いちょう祭は大阪大学の創立記念日を祝し、かつ、全学をあげて新入生を歓迎する催しです。平成17年度は4月28日・29日に吹田・豊中の両キャンパスで開催されました。この機を捉えて工学研究科電気電子情報工学専攻(平成16年度までの電子情報エネルギー工学専攻、電気工学専攻、通信工学専攻、電子工学専攻が一体となって平成17年度から新たに発足した大専攻)では、専攻の研究室の研究内容を新入生、高校生および一般の見学者らに広く知ってもらうことを目的として、「電気・電子・情報通信工学の研究の最前線に触れてみよう」というタイトルで専攻の25研究室全てを一般公開しました。公開テーマ一覧は表に示すとおりです。多くの見学者に恵まれ、両日で延べ約 400名の見学者がありました。平成18年度も4月30日(日)および5月1日(月)の両日にわたって同様のテーマでの全研究室の一般公開および新しい試みとして模擬授業が行われます。澪電会会員の皆様におかれましてもゴールデンウィークの一日を利用して久しぶりに母校の研究室を見学していただければ幸いです。なお、旧情報システム工学専攻の研究室がある情報科学研究科におきましてもコンベンションセンター横に新設なりました情報系総合研究棟にて企画展示、研究室開放行事および一日体験教室が行われます。

平成17年度いちょう祭研究室一般公開テーマ一覧(電気電子情報工学専攻関係分)
電力品質と新しい電力システムを考えよう
AGVの自律分散制御
都市における望ましいエネルギーシステムとは
    -ビジュアルコミュニケーションシステムによる分析-
身近な世界のシステム科学
人工太陽を相対論で作るには
プラズマとイオンビームの世界
様々なビームが創る先端技術の世界を覗いてみよう
中性子がつくる21世紀 -核エネルギーと先端核医療-
高度情報化社会を支えるネットワーク基盤構築
テラからペタへ -進化を続ける光ネットワーク-
IP携帯電話の実験
  -ソフトウェア無線ネットワークと電波エージェント-
デジタル放送時代を支えるマルチメディア技術
  -安全で便利なパーソナルメディアの流通に向けて-
コードレスでスマートスペースを実現する無線通信技術
光の極限的な性質とその通信への応用
電波でみる世界の雷
高機能ダイヤモンド電子デバイスの開発
タンパク質結晶の新しい育成方法
  -電気工学から生まれたバイオベンチャー-
カーボンナノチューブが拓く次世代テクノロジー
光と磁場で探る半導体 -強磁場中における変調分光測定装置-
電子が生み出す機能探索 -新材料・新機能デバイスの研究開発-
プラスチックが拓く未来のエレクトロニクス
  -有機LEDとレーザー-
光の未来技術を拓く集積量子フォトニックデバイス
超音波による立体視を目指して
極微な力で組み立てるナノの世界-原子文字を描く-
脳に学んだロボットビジョン
伊瀬敏史(電気・昭55、M57、D61)記
会報澪電No.27より

母校のニュース一覧


Last-modified: 2010-03-12 (金) 19:18:35 (5153d)