母校のニュース(2007年)グローバルCOE「次世代電子デバイス教育研究開発拠点」グローバルCOEは世界に冠たる教育研究拠点をわが国の大学に設置する目的で設けられた。採択されたグローバルCOEの約9割(54拠点)は”21世紀 COE”の継続であるが、残りの9拠点は20倍もの競争率の中を勝ち抜いて採択されている。大阪大学工学研究科の電気系は前回(平成14年度)の”21世紀COE”で採択されなかったが、今回、専攻の教員の智恵を出し合って真剣に議論を続けた末、採択されるに至った。 拠点では、博士後期課程学生の経済的支援に加え、若手研究者(ポスドク、助教)に対する教育・研究の環境整備を重視している。学位取得者の約7割が民間企業に就職していることを念頭に置き、実学の伝統を取り入れた教育を博士後期課程の学生に提供し、わが国のエレクトロニクス産業界を支える人材の育成を主目的としている。 本拠点を支える研究シーズとしては諸先輩方のご努力により得られた、(1)世界最高品質のGaN結晶成長技術、(2)光学結晶CLBOの発見と波長 193nmの固体連続発振光源の開発、(3)世界初の青色有機発光ダイオードの作製、などの”新材料”に加え、”新手法”の研究シーズとして、(4)1本の配線で数百ものデータの送受信が可能なインターフェース、(5)室温原子操作技術、(6)テラヘルツイメージング技術、などが挙げられる。これらの”新材料”と”新手法”の研究シーズをセンシング、フォトニック、パワーの3種類のデバイス開発に振り向け、さらに集積回路を組み込んだスマートインテグレーションを行い、将来の「安心安全」、「低環境負荷」、「高信頼性」社会を実現することを目的としている。 研究体制としては、”材料開発”、”評価解析”および”インテグレーション”の3つの支援部門が、”パワーデバイス”、”センシングデバイス”、”フォトニックデバイス”の3デバイス部門と有機的に連携しながら、次世代の電子デバイスの研究開発を推進してゆく。 教育面では、 (1)若手リーダー(助教など)が研究室横断的に博士課程学生、ポスドク、企業研究員などの協力を得て、戦略テーマに沿った教育・研究のユニット、 IDER(Innovation oriented dynamic education and research)を立ち上げる。IDERメンバーはリーダーの指導の下、ユニットの出口を見据えながら個々の研究内容を深めるとともに、他人と協力してプロジェクトを遂行する。さらに、(2)「研究開発の科学的方法論」、すなわち、①普遍原理を形式知として抽出する力、②形式知(モデル)から仮想実験ができる力、を養う教育プログラムを提供する。 また、グローバル拠点にふさわしい国際性を担保すべく、夏休み期間中、海外から講師を招聘してサマースクールを開催する。そこに国際公募した短期留学生を20名程度受け入れ、拠点が提供するセミナーへの出席とIDERを実践体験させるとともに、参加する日本人学生にとっては擬似海外体験を通して国際的な価値観・判断力を養う計画である。 詳しい事業内容については下記のウエブサイトに掲載しているので、ご覧ください。 http://www.eei.eng.osaka-u.ac.jp/gcoe/ グローバルCOE「次世代電子デバイス教育研究開発拠点」 リーダー
谷口 研二(電子・昭46・M48)記
会報澪電No.29より
アンビエント情報社会基盤創成拠点-生物に学ぶ情報環境技術の確立-文部科学省グローバルCOEプログラム
「アンビエント情報社会基盤創成拠点-生物に学ぶ情報環境技術の確立-」
本グローバルCOEプログラム拠点の中核である本学大学院情報科学研究科は、第3期科学技術基本計画で重視されている融合科学の推進を先取りし、平成 14年度に「情報科学技術と生物学の融合」を重要な理念の一つとして創設されました。この理念は、同じく平成14年度開始の文部科学省21世紀COEプログラムの主テーマ「生物に学ぶ情報技術の創出」によって具現化され、平成19年度実施の事後評価において最高レベルの評価を得ました。 現在、日本では「ユビキタス情報社会」の構築が急速に進んでいます。情報科学研究科では、「究極の」あるいは「ポスト」ユビキタス情報社会とは何かを議論し、「アンビエント (ambient) 情報社会」の創成に向けた情報システムの研究・教育を新たな目標と定め、平成17年12月に「グローバル10計画(情報科学分野の世界の大学のトップ10 入りを目指す)」としてまとめました。 本拠点は、21世紀COEプログラムにおける成果を発展させ、グローバル10計画に基づいたアンビエント情報社会創成のための研究推進と人材育成を目的とします。また、情報科学研究科のみならず、本学の工学研究科、基礎工学研究科、人間科学研究科、言語文化研究科、産業科学研究所、サイバーメディアセンターから強力なメンバーが参画します。 アンビエント情報環境は、情報技術が生活空間に溶け込むことで環境と人間がインタラクションを起こし、より適当な(例えば、「より安らぎが覚えられる」、「より知的生産性に富む」)状態へ自然に移行して調和する空間です。本拠点では、予見が困難な人間行動や動的変化の激しい大規模情報システムに対応してアンビエント情報環境を構築するために、生物の原理に学ぶ情報技術を発展させます。特に、その情報環境構築のためには、ハードウェア、ソフトウェアの設計・構成から、ネットワーク技術、データ工学、インタフェース工学に至る、情報システムの下位層から上位層まで網羅的な分野が研究対象となります。また、それらの複数階層に係わる技術として、システムのセキュリティ、ディペンダビリティに関する研究を推進します。さらに、人間との深い係わりから自然言語処理、対人社会心理に関する研究を進めます。これらの研究活動の展開により、従来の情報技術の延長では実現不可能な、大きなブレークスルーの達成を目指します。 本拠点では、研究活動とともに情報科学技術分野の高度人材の養成を重視します。特に、「新しい情報システムを構想し、研究開発できるデザイン力」、「国際的な視野を持って活動できるコミュニケーション力」、「人と協働してプロジェクトを遂行できるマネジメント力」の三つの力を有し、グローバルな視点で 21世紀の情報科学技術の発展に大きく貢献できる若手人材を育成する「グローバルPI (Principal Investigator) 養成計画」を推進します。 末筆ながら、澪電会の皆様には本拠点形成プログラムへのご支援の程を何卒宜しくお願い申し上げます。
西尾 章治郎(大阪大学理事・副学長)記
会報澪電No.29より
西原功修教授 最終講義レーザーエネルギー学研究センター教授・西原功修先生は、平成20年3月31日をもって定年退職されることとなりました。ご退職にあたり、最終講義が平成20年2月22日(金)午後3時よりレーザーエネルギー学研究センター4階大ホールにて行われました。当日は、当センター、工学部、基礎工学部といった学内の職員・学生の他、先生にゆかりのある多くの方々が聴講に来られました。早々と満員御礼状態となった中、萩行政憲副センター長の司会のもと最終講義は定刻通りに始まりました。講義に先立ち、三間圀興センター長による紹介、また上田良夫先生(工学研究科電気電子情報工学専攻)、占部伸二先生(基礎工学科システム創成専攻)から御挨拶を賜りました。 「プラズマと光と非線形性」と題されたその講義では、最初に、谷内俊弥先生、長谷川晃先生、山中千代衛先生といった大恩師への謝意を表され、その後、 40年に渡る研究人生を聴講者と一体となって走馬灯を見るかのごとく縷々と語られました。レーザー核融合研究に関しては、核融合燃焼、レーザーアブレーション、キャノンボールターゲット爆縮といった物理機構の解明、高効率燃料爆縮の提案、世界初となった球ターゲットのスタグネーション時の3次元数値計算による非線形異常成長の発見、Richtmyer-Meshkov不安定性の漸近線形解析解の導出などについて述べられました。非線形物理研究に関しては、3波共鳴相互作用に伴うトリプルソリトン、3次元サブサイクルソリトンや非一様フィラメンテーションの発見、渦の生成・消滅を伴う渦界面の非線形理論モデルの提唱などについて解説されました。計算物理分野では、世界に先駆けて開発を試みた4次の高精度を持つ3次元強結合プラズマ粒子コードや3次元放射流体コード、クーロン力を含み電子のダイナミクスを扱う事のできる分子動力学コードなど独自のコードを開発とその成果について述べられました。また、最後の5年間、理論グループリーダーとして尽力されプロジェクトを成功に導いた文部科学省リーデイング・プロジェクト「極端紫外(EUV)光源開発等の先進半導体製造技術の実用化」の研究開発における、レーザーからEUV光への変換効率の向上、イオンデブリ抑制法の提案など物理の解明に関して述られました。 最後に、先生の今後の抱負と、これまでの研究人生にかかわってこられた方々への感謝の言葉を述べられ最終講義を締めくくられました。講義終了後、先生の御指導・御活躍に感謝の意を込め花束が贈呈され、会場からの大きな拍手の中、先生はご退席されました。その後、場所を移して懇親会が催され、中締め後も先生は多くの同窓生達に囲まれ、歓談は果てる事無く深夜まで続きました。 村上匡且(電気・昭58・M60・D63)記
会報澪電No.29より
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